親亡き後の暮らしをどう支えるかは、精神障害のある方のご家族にとって大きな心配ごとです。精神保健福祉士として相談を受けていても、「自分がいなくなったらこの子はどうなるのか」という声をよく聞きます。この記事では、準備の考え方を5つに整理してお伝えします。
この記事で分かること
- 親亡き後に起こりやすい3つの困りごと
- 成年後見制度や家族信託など、備えに使える制度の違い
- 今日から始められる3ステップの進め方
結論:親亡き後の備えは「元気なうちに少しずつ」が基本
親亡き後の準備は、一度にすべてを決める必要はありません。住まい・お金・相談先の3つを、時間をかけて整えていくことが大切です。精神保健福祉士として感じるのは、早く動いたご家庭ほど、本人も家族も気持ちに余裕があるということです。
親亡き後とは?なぜ備えが必要なのか
親亡き後とは、日常の世話や金銭管理を担ってきた親が、病気や高齢で支えられなくなった後の生活を指す言葉です。障害のある方の支援では「親亡き後問題」と呼ばれることもあります。
親亡き後に起こりやすい3つの困りごと
- 住まいの問題:実家を出て暮らす先が決まっていない
- お金の問題:障害年金や預貯金の管理を任せられる人がいない
- 相談先の問題:通院や福祉サービスの手続きを一緒に考える人がいない
どれも、親が元気なうちなら選択肢を広げやすい課題です。
親亡き後の暮らしを支える制度は?
備えに使える主な制度や仕組みを、表にまとめました。細かな要件や費用は、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
| 制度・仕組み | 主な役割 | 相談先の例 |
|---|---|---|
| 成年後見制度 | 財産管理や契約を法的に支える | 家庭裁判所・社会福祉協議会 |
| 家族信託 | 親の財産を託して本人のために使う | 司法書士・弁護士 |
| 遺言書 | 財産の渡し方を事前に決める | 公証役場・専門職 |
| 日常生活自立支援事業 | 日常的な金銭管理を手伝う | 社会福祉協議会 |
| グループホーム | 地域で支援を受けながら暮らす | 相談支援事業所・自治体 |
成年後見制度とは?いつから使えるのか
成年後見制度は、判断する力が十分でない方の財産管理や契約を支える仕組みです。詳しくは成年後見制度の解説記事で説明しています。任意後見は本人の判断力があるうちに、後見人を自分で選んでおく方法です。
家族信託や遺言書は何が違う?
家族信託は、親の財産の管理を信頼できる家族などに託す仕組みです。遺言書は、亡くなった後の財産の渡し方を決めるものです。目的が違うため、状況に合わせて専門家に相談しながら選ぶとよいでしょう。
親亡き後のお金は?障害年金と金銭管理の考え方
障害年金は、本人の生活を支える大切な収入源です。制度の概要は、厚生労働省の障害年金のページで確認できます。
金銭管理が難しい場合は、日常生活自立支援事業が助けになります。通帳の管理や支払いの手伝いなど、身近なお金の困りごとを支える仕組みです。詳しくは日常生活自立支援事業の解説記事をご覧ください。
親亡き後の住まいはどうする?グループホームという選択肢
親亡き後の住まいとして、グループホームは有力な選択肢です。世話人などの支援を受けながら、地域で共同生活ができます。仕組みはグループホームとはで詳しく解説しています。
また、緊急時の受け入れや相談をまとめて担う地域生活支援拠点も、安心につながる仕組みです。実際の利用可否は自治体ごとに異なるため、窓口でご確認ください。
親亡き後の相談先と日中の居場所を作るには
住まいやお金と同じくらい大切なのが、日中の過ごし方と相談先です。相談支援専門員は、福祉サービスの計画づくりや調整を一緒に進めてくれる存在です。
日中の居場所としては、就労継続支援B型のように、通うことで生活リズムと人とのつながりが生まれる場もあります。親以外の支援者とつながっておくことが、将来の安心を支えます。
きょうだいの役割は?家族で話し合うときのポイント
きょうだいに負担が偏らないよう、役割を事前に話し合うことが大切です。きょうだい支援の記事も参考にしてください。
話し合いでは、次の点を意識すると進めやすくなります。
- 本人の希望をまず聞く
- できること・できないことを家族で正直に共有する
- 一人で抱えず、第三者の専門職に入ってもらう
今日から始める3ステップ
- 現状を書き出す:収入、財産、通院先、利用中のサービスを一覧にします。
- 相談先を決める:相談支援事業所や社会福祉協議会に、まず一度相談します。
- 本人と話す:本人の望む暮らしを聞き、少しずつ制度を選んでいきます。
国の障害福祉サービスの全体像は、厚生労働省の障害福祉サービスのページで確認できます。
よくある質問
Q. 親亡き後の準備は、いつから始めればよいですか?
A. 親が元気で判断力のあるうちに始めるのが望ましいといわれます。任意後見や家族信託などは、判断力があるうちでないと選べない場合があります。まずは情報収集から始めてみてください。
Q. 成年後見制度を使うと、デメリットはありますか?
A. 後見人への報酬が必要になる場合や、財産の使い方に制約が出る場合があります。ご本人の状況によって向き不向きがあるため、専門家や自治体窓口に相談して判断してください。
Q. 親亡き後の費用は、どれくらい必要ですか?
A. 住まいの形や受けるサービスによって大きく異なり、一概にはいえません。収入と支出を書き出し、お住まいの自治体の窓口や相談支援専門員にご相談ください。
Q. 本人が将来の話をしたがらない場合はどうしますか?
A. 無理に結論を求めず、「どんな暮らしが安心か」を日常の会話の中で少しずつ聞いてみてください。本人のペースを尊重することが大切です。
琉仁福祉会にご相談ください
NPO法人琉仁福祉会では、沖縄県沖縄市と埼玉県で就労継続支援B型を運営しています。将来の暮らしや福祉サービスについても、精神保健福祉士が相談をお受けしています。見学や体験利用も歓迎していますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
親亡き後の備えは、住まい・お金・相談先の3本柱で考えると整理しやすくなります。制度は成年後見制度、家族信託、遺言書、日常生活自立支援事業、グループホームなど複数あり、組み合わせて使うのが一般的です。
大切なのは、本人の希望を中心に、家族だけで抱え込まないことです。この記事は一般的な情報であり、個別の法律・医療判断を示すものではありません。具体的な手続きは、専門家や自治体の窓口にご相談ください。
お住まいの地域で相談できる窓口
就労継続支援B型をはじめとする障害福祉サービスの相談先は、お住まいの市区町村にあります。遠方の事業所を探すより、まず地元の窓口に当たるのが近道です。
- 市区町村の障がい福祉担当窓口 — 受給者証の申請、制度全般の相談
- 相談支援事業所 — サービス等利用計画の作成、事業所探しの相談
- 基幹相談支援センター — 地域の相談支援の中核となる機関
- 都道府県の精神保健福祉センター — こころの健康に関する専門相談
「どこに聞けばいいか分からない」という場合は、お住まいの市区町村の代表番号に電話して「障害福祉サービスについて相談したい」とお伝えください。担当窓口につないでもらえます。
沖縄にお住まいの方へ
NPO法人琉仁福祉会では、沖縄県沖縄市で就労継続支援B型事業所を運営しています。見学やご相談をご希望の方は 琉仁福祉会の公式サイト をご覧ください。お問い合わせフォーム からもご連絡いただけます。

