意思決定支援とは|精神障害のある方が自分らしく生きる方法を精神保健福祉士が解説

意思決定支援とは、障害のある方が日常生活や社会生活のさまざまな場面で、自ら意思決定できるよう支援する取り組みのことです。2017年に厚生労働省が「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」を策定して以来、すべての障害福祉サービスで求められる重要な支援の柱となっています。

精神保健福祉士として、私は就労継続支援B型の現場で意思決定支援の重要性を毎日実感しています。利用者さんが「自分で選んだ」と感じられる体験の積み重ねが、回復と自立への大切な一歩になります。

本記事では、意思決定支援の定義・背景から実践的な手順、家族や支援者が日常でできることまで、具体的に解説します。

【結論】意思決定支援の核心は「その人の意思を尊重すること」。支援者が代わりに決めるのではなく、本人が主役になれる環境をつくることが、回復への最短ルートです。

意思決定支援とは:定義と2017年ガイドライン

意思決定支援は、「障害者の権利に関する条約(CRPD)」に基づく概念です。障害のある方が自分で意思を決定する権利を尊重し、そのプロセスを支える支援を指します。

2017年の厚生労働省ガイドラインでは、意思決定支援を「自ら意思を表明することが困難な方が、日常生活・社会生活に関する意思を形成し、表明し、実現するための支援」と定義しています。

大切なのは、次の3つの観点です。

  • 本人の意思・希望を最大限に尊重する
  • 意思決定に必要な情報を、わかりやすい形で提供する
  • 意思表明が難しい場合でも、最善の利益を考える

この支援は、サービス開始時の選択だけでなく、日常の作業選択や生活場面のあらゆる意思決定に関わります。特に、精神疾患や発達障害のある方にとっては、自分の意思を言語化することが難しい場面もあるため、支援者の丁寧な関わりが欠かせません。

意思決定支援が必要な3つの理由

なぜ今、意思決定支援がこれほど重視されているのでしょうか。主な理由が3つあります。

① パターナリズムの克服

かつての福祉サービスでは、支援者や家族が「本人のため」と判断して先回りして決定することが少なくありませんでした。しかしこれは、本人の意思を置き去りにするリスクがあります。意思決定支援は、この「代わりに決める」という慣習を見直す取り組みです。

② 障害者権利条約の批准

日本は2014年に障害者権利条約を批准しました。同条約第12条では、障害者の法的能力の行使における支援を締約国に求めており、意思決定支援はその具体的な実践形態の一つです。

③ 回復支援への効果

精神障害のある方の回復(リカバリー)には、自己決定の経験が重要です。「自分で決めた」という実感は、自己肯定感と社会参加意欲を高め、通所継続や就労への動機づけにもなります。

意思決定支援の基本プロセス:3ステップで理解する

意思決定支援は、次の3つのステップで進みます。このプロセスを理解することで、日常の支援がより丁寧になります。

ステップ 内容 支援者の具体的な役割
① 意思形成支援 選択肢とその結果を理解できるよう情報提供する 平易な言葉・図・絵などを活用。選択肢を複数提示する
② 意思表明支援 本人が自分の考えを外部に伝えられるよう支援する 十分な時間と安心できる環境の確保。言葉以外の表明も尊重
③ 意思実現支援 表明した意思を実際の生活で実現するよう支援する 関係機関との連携・必要なサービス調整を行う

このプロセスは一度で完結するものではありません。状況が変われば意思も変わります。支援者は定期的に本人の気持ちを確認し、変化があれば柔軟に対応することが大切です。

就労継続支援B型での意思決定支援の実践

就労継続支援B型の現場では、意思決定支援が日常のあらゆる場面に関わります。以下に代表的な場面と実践例を紹介します。

作業・活動の選択

どの作業をやりたいか、どの時間帯に通所するかを本人に選んでもらうことは、意思決定支援の出発点です。得意なこと・好きなことを尊重することで、通所継続の動機づけにもなります。「今日はどれをやりますか?」というシンプルな問いかけが、毎日の意思決定支援です。

個別支援計画への参加

個別支援計画は、本人の目標や希望をもとに作成します。支援者が一方的に計画を作るのではなく、本人が自分の言葉で「こうなりたい」「これをやってみたい」と話せる場を設けることが重要です。

サービスの継続・移行の意思確認

B型を続けるか、就労移行支援へステップアップするかなど、サービスの方向性も本人の意思を中心に考えます。6ヶ月ごとのモニタリングで、「今の状況はどうですか?将来はどうしたいですか?」と丁寧に確認します。焦らせず、本人のペースを尊重することが大切です。

琉仁福祉会での取り組み

NPO法人琉仁福祉会では、利用者さんが「自分で選んでいる」と感じられる支援環境づくりを大切にしています。毎朝の作業選択から半年ごとの個別支援計画まで、すべての場面で意思決定支援を実践しています。

家族・支援者が意思決定支援で心がけること

意思決定支援は、専門職だけが行うものではありません。家族や身近な支援者の日常的な関わりが、本人の意思決定力を大きく育てます。

「待つ」ことの大切さ

意思決定には時間がかかります。「早く決めて」と急かすと、本人へのプレッシャーになります。十分な沈黙を尊重し、焦らず待つことが重要です。返答がなくても、考えている時間を大切にしましょう。

選択肢を絞りすぎない

「AかBか」の二択だけでなく、「他に何か望むことはありますか?」と開かれた質問を心がけます。本人が予想外の答えを出したとき、それをしっかり受け止める姿勢も重要です。

失敗を責めない環境づくり

自分で決めた結果がうまくいかないこともあります。しかし「失敗しても大丈夫」という安心感があってこそ、次の意思決定に挑戦できます。失敗を責めるのではなく、「次はどうしようか一緒に考えよう」という姿勢が大切です。

代理決定は最後の手段

本人の意思を確認する手段をすべて尽くした後でも意思の確認が困難な場合のみ、家族・支援者が「最善の利益」を判断します。これは意思決定支援の理念に基づく最後の手段であり、日常的に代理決定することは避けるべきです。

よくある質問(FAQ)

Q:意思決定支援とインフォームドコンセントは同じですか?

A:似た概念ですが異なります。インフォームドコンセントは主に医療場面での同意取得を指します。意思決定支援はより広い生活全般にわたる継続的なプロセスであり、同意取得だけでなく意思形成・表明・実現のプロセス全体を支援します。

Q:精神障害のある方の意思決定支援で特に注意することは?

A:精神障害のある方は、症状の波によって意思が変動することがあります。急性期と安定期では意思が異なる場合もあるため、状態が落ち着いているときに丁寧に確認することが重要です。また、支援者との信頼関係が意思表明の前提となります。具体的な支援方法については、精神保健福祉士や相談支援専門員にご相談ください。

Q:B型事業所の利用を断ったり変更したりすることはできますか?

A:はい、利用者は自分の意思でサービスを選択・変更する権利があります。「やめたい」「変えたい」という意思も、大切な意思決定として尊重されます。希望がある場合は、担当の相談支援専門員やB型事業所のスタッフにご相談ください。

Q:子どもや若者への意思決定支援はどうすればいいですか?

A:年齢や理解力に応じたわかりやすい情報提供が基本です。絵・写真・具体的な体験を通じた選択など、言語に頼らない方法も有効です。発達障害のある子どもへの意思決定支援は、日常の小さな選択から積み重ねることが大切です。

琉仁福祉会に相談する

NPO法人琉仁福祉会(沖縄県沖縄市・埼玉県)では、精神保健福祉士が利用者お一人おひとりの意思決定支援を丁寧に実践しています。

「自分がどうしたいかわからない」「どのサービスを選べばいいか迷っている」という方も、まずはお気軽にご相談ください。見学・体験利用も随時受け付けています。

  • 沖縄市事業所(BISTARGO):お電話・LINEでお問い合わせください
  • 埼玉事業所:随時見学受付中。通所を検討している方はお気軽にご連絡ください

→ お問い合わせフォームはこちら

まとめ

意思決定支援とは、障害のある方が自分自身の意思で人生を選び取れるよう寄り添う支援です。情報提供・意思表明・意思実現の3ステップを通じて、支援者は「代わりに決める人」ではなく「一緒に考える伴走者」になります。

B型事業所での作業選択から将来の就労移行まで、日常のあらゆる場面が意思決定支援の実践の場です。精神保健福祉士として、利用者さんの「やりたい」「やってみたい」という声を大切に受け止め続けることが、私たちの役割だと考えています。

意思決定支援について詳しく知りたい方、または就労継続支援B型の利用を検討している方は、琉仁福祉会にお気軽にご相談ください。

お住まいの地域で相談できる窓口

就労継続支援B型をはじめとする障害福祉サービスの相談先は、お住まいの市区町村にあります。遠方の事業所を探すより、まず地元の窓口に当たるのが近道です。

  • 市区町村の障がい福祉担当窓口 — 受給者証の申請、制度全般の相談
  • 相談支援事業所 — サービス等利用計画の作成、事業所探しの相談
  • 基幹相談支援センター — 地域の相談支援の中核となる機関
  • 都道府県の精神保健福祉センター — こころの健康に関する専門相談

「どこに聞けばいいか分からない」という場合は、お住まいの市区町村の代表番号に電話して「障害福祉サービスについて相談したい」とお伝えください。担当窓口につないでもらえます。

沖縄・埼玉にお住まいの方へ

NPO法人琉仁福祉会では、沖縄県沖縄市と埼玉県川口市で就労継続支援B型事業所を運営しています。見学やご相談をご希望の方は 琉仁福祉会の公式サイト をご覧ください。お問い合わせフォーム からもご連絡いただけます。