クライシスプランとは|精神障害の方が自分でつくる危機対応計画を精神保健福祉士が解説

クライシスプランとは、精神障害のある方が体調が悪化したときのサインと対処法をあらかじめ書き留めておく、個人の危機対応計画書です。精神保健福祉士として多くの当事者の方に寄り添ってきた立場から言えば、このプランをつくることが再発防止と安定した日常生活の両方に大きな力を発揮すると感じています。

本記事では、クライシスプランの定義・構成要素・作り方から、就労継続支援B型での活用法まで、具体的にご説明します。

クライシスプランとは何か

クライシスプランとは、英語の「Crisis Plan(危機対応計画)」から来た言葉で、精神的な体調悪化が起きたときにどう行動するかを事前に計画・文書化したものです。

たとえば、睡眠が乱れはじめたときや、気持ちの落ち込みが続いたとき、誰に連絡し、どんな行動を取るかを書き留めておきます。症状が深刻化する前に適切な対応が取れるようになります。

精神保健福祉の世界では「WRAP(Wellness Recovery Action Plan)」と呼ばれる回復計画ツールの中の重要な要素として位置づけられています。WRAPは当事者が主体となって自分の回復プロセスを計画するツールであり、クライシスプランはその核心部分を担います。

クライシスプランが役立つ3つの理由

クライシスプランをつくることには、次の3つの大きな意義があります。

  • 自分の状態を客観的に把握できる:体調悪化のサインを言語化することで、自分の変化に気づきやすくなります。特に精神障害のある方は、体調の変化を言葉にすることで自己理解が深まります。
  • 支援者・家族と情報を共有できる:プランを共有することで、支援者が適切なタイミングで介入できます。支援の一貫性が保たれ、危機的状況を未然に防げます。
  • 緊急時に迷わず行動できる:気持ちが不安定なときでも、プランがあれば次の行動が明確になります。混乱していても判断しやすくなります。

就労継続支援B型では日々の作業を通じて体調管理を行いますが、クライシスプランがあることで支援員も安心して対応できます。

クライシスプランに書く6つの項目

以下が、クライシスプランの基本的な構成です。どの項目も、自分自身の言葉で書くことが大切です。

項目 内容の例
①いつもの自分の状態 よく眠れる、食欲がある、作業に集中できる
②体調悪化のサイン(早期) 眠れない夜が2日続く、人と話したくなくなる
③自分でできる対処法 散歩をする、音楽を聴く、入浴をゆっくり行う
④周りに頼めること 家族に話を聞いてもらう、支援員に声をかける
⑤受診・相談の目安 眠れない夜が3日以上続いたとき
⑥緊急連絡先 主治医名・電話番号、支援事業所の緊急連絡先

まずこの6項目から少しずつ埋めていくと、取り組みやすくなります。完璧である必要はなく、書けるところから始めましょう。

クライシスプランの作り方ステップ

クライシスプランは、支援者と一緒に作るのが理想的です。以下のステップで進めましょう。

  1. 自分の「いつもの状態」を書き出す:体調が安定しているときの様子を具体的に記録します。睡眠時間、食欲、気分の目安などを書くと役立ちます。
  2. 過去のクライシスを振り返る:以前に体調が悪化したとき、どんなサインがあったかを思い出します。支援者や家族に聞くのも有効です。
  3. サインごとの対処法を決める:軽い変化・中程度の変化・緊急時の3段階で対処法を整理します。段階的に行動が取れるよう具体的に書きましょう。
  4. 支援者・家族と内容を共有する:主治医、支援員、家族にプランの内容を知ってもらいます。共有することで支援のチームワークが高まります。
  5. 定期的に見直す:生活状況や回復段階に合わせて内容を更新します。目安は3〜6か月に一度です。

精神保健福祉士として、最初から完璧を目指す必要はないとお伝えしています。まず1〜2項目だけでも書いてみることが大切です。書いた内容は正解・不正解ではなく、自分自身の記録です。

就労継続支援B型でのクライシスプラン活用法

クライシスプランは、就労継続支援B型での日々の支援に組み込むことができます。具体的には次のような場面で役立ちます。

  • 利用開始時の個別支援計画作成のタイミングでプランを作成する
  • 毎朝のチェックイン時に「今日の体調」を確認する際の基準として使う
  • 体調悪化のサインを支援員が早期発見するための共有ツールにする
  • 欠席が続いたときの対応手順をあらかじめ決めておく
  • 定期面談でプランを見直しながら回復の段階を一緒に確認する

琉仁福祉会の事業所では、利用者の方が自分でプランを見直せるよう、支援員が定期的に面談を行っています。クライシスプランがあることで、利用者と支援員の間に信頼関係が育まれ、体調悪化への対応もスムーズになります。

また、リカバリーの考え方を基盤とした支援では、クライシスプランは当事者が自分の人生の主役であることを確認するツールとして位置づけられます。支援者が「管理する」のではなく、本人が「自分で判断する力」を育むことが目的です。

WRAPとクライシスプランの違い

WRAPとは「Wellness Recovery Action Plan(元気回復行動プラン)」の略で、アメリカの当事者メアリー・エレン・コープランドが1990年代に考案した回復支援ツールです。

クライシスプランはWRAPの構成要素のひとつで、特に「体調が悪化したときの対応」に特化しています。WRAPはより広い概念で、日常の元気を保つ行動計画全体(ウェルネスツールボックス、日常生活管理プランなど)を含みます。

クライシスプランは単独でも作成でき、日本の障害福祉サービスの現場でも広く活用されています。精神保健福祉士として、まずはクライシスプランから取り組み始めることをおすすめしています。

クライシスプランに関するよくある質問

Q. 一人でクライシスプランを作ることはできますか?

作ることは可能ですが、支援員や主治医と一緒に作ると内容がより具体的になります。一人で始める場合も、後から専門家に見てもらうことをおすすめします。

Q. どのくらいの頻度でクライシスプランを見直せばいいですか?

回復の段階や生活環境が変わったタイミングで見直すのが理想です。目安としては3〜6か月に一度、または体調に大きな変化があったときに更新しましょう。

Q. 医療機関とクライシスプランを共有する必要がありますか?

可能であれば主治医にも見せることをおすすめします。受診のタイミングや緊急連絡の基準を医師と一緒に確認しておくと、より安心できます。ただし、プランの内容はあくまで当事者本人のものです。医療行為の代わりにはなりません。

Q. B型事業所に通い始めるとき、クライシスプランは必要ですか?

必須ではありませんが、体験利用や利用開始の初期段階でスタッフと一緒に作ることで、自分に合ったサポートを受けやすくなります。不安な方は「まだ何も書けていない」という状態でも、ぜひ相談ください。

琉仁福祉会への相談・事業所見学について

クライシスプランの作成に不安を感じている方、就労継続支援B型に関心がある方は、ぜひNPO法人琉仁福祉会にご相談ください。

精神保健福祉士が在籍するスタッフが、ひとりひとりの状況に寄り添いながらお話を聞きます。沖縄県沖縄市と埼玉県で事業所を運営しており、事業所見学・体験利用からでも安心してお越しいただけます。

  • 対象:精神障害・発達障害・知的障害のある方
  • サービス:就労継続支援B型(就労訓練・農作業・喫茶業務など)
  • 相談窓口:事業所への電話・メールにて随時受付

ひとりで抱え込まず、まず話してみることからはじめてみてください。クライシスプランづくりも、私たちスタッフがお手伝いします。

まとめ:クライシスプランで自分らしい回復を

クライシスプランとは、体調悪化のサインと対処法を事前に書き留めておく、精神障害のある方の回復を支える重要なツールです。

プランを作成し、支援者や家族と共有することで、再発を防ぎ安定した生活を続けることができます。就労継続支援B型での利用と組み合わせることで、その効果はさらに高まります。

クライシスプランと合わせて、自立支援医療(精神通院)や精神障害者保健福祉手帳など、精神障害のある方が活用できる公的制度も積極的にご利用ください。詳しくはWAM NET(福祉・保健・医療情報)でも確認できます。

まずはひとつの項目から書きはじめてみましょう。琉仁福祉会のスタッフがそのお手伝いをします。

お住まいの地域で相談できる窓口

就労継続支援B型をはじめとする障害福祉サービスの相談先は、お住まいの市区町村にあります。遠方の事業所を探すより、まず地元の窓口に当たるのが近道です。

  • 市区町村の障がい福祉担当窓口 — 受給者証の申請、制度全般の相談
  • 相談支援事業所 — サービス等利用計画の作成、事業所探しの相談
  • 基幹相談支援センター — 地域の相談支援の中核となる機関
  • 都道府県の精神保健福祉センター — こころの健康に関する専門相談

「どこに聞けばいいか分からない」という場合は、お住まいの市区町村の代表番号に電話して「障害福祉サービスについて相談したい」とお伝えください。担当窓口につないでもらえます。

沖縄・埼玉にお住まいの方へ

NPO法人琉仁福祉会では、沖縄県沖縄市と埼玉県川口市で就労継続支援B型事業所を運営しています。見学やご相談をご希望の方は 琉仁福祉会の公式サイト をご覧ください。お問い合わせフォーム からもご連絡いただけます。