パニック障害があると、「また発作が起きたらどうしよう」という不安から、働くことに二の足を踏んでしまう方は少なくありません。実は、就労継続支援B型は、そうした予期不安を抱えながらでも、自分のペースで働き始められる障害福祉サービスです。この記事では、精神保健福祉士として多くの利用者と関わってきた経験をもとに、パニック障害のある方が就労継続支援B型を利用するための条件や支援内容、日常でできる対処法までをお伝えします。
この記事で分かること
- パニック障害があっても就労継続支援B型を利用できる条件
- 発作への不安と向き合いながら働くための具体的な支援内容
- 工賃の実情や利用開始までの流れ
結論から言うと、パニック障害は診断名だけで利用の可否が決まるものではなく、日常生活や社会生活のしづらさが継続している場合に、就労継続支援B型を含む障害福祉サービスの対象となり得ます。発作が起きたときの対応をあらかじめ相談できる環境で、無理のない時間から働き始めることが可能です。
パニック障害とはどのような状態か
パニック障害は、動悸や過呼吸、めまいといった強い身体症状を伴うパニック発作を繰り返し、「また発作が起きるのではないか」という予期不安から、外出や電車移動、人混みを避けるようになる状態です。自律神経の乱れが背景にあるとされ、内科的な検査で異常が見つからないことも多く、精神科や心療内科での診断と治療が必要になります。
症状の程度には波があり、発作がない時期は問題なく過ごせる方もいれば、広場恐怖を伴い外出自体が難しくなる方もいます。この症状の個人差の大きさが、就労を考えるうえで配慮が必要なポイントです。
パニック障害があっても就労継続支援B型は利用できるか
就労継続支援B型は、障害者手帳を持っていなくても、主治医の診断書や意見書によって「就労が困難であること」が確認できれば利用できるサービスです。パニック障害の診断を受け、通勤や一般就労での就業継続が難しいと判断される場合、市区町村の窓口に申請し、障害福祉サービス受給者証の交付を受けることで利用が始められます。
年齢制限は原則18歳以上65歳未満で、雇用契約を結ばずに、自分の体調に合わせて通所日数や作業時間を調整できる点が大きな特徴です。利用条件の詳細はお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
就労継続支援B型で受けられる支援内容
就労継続支援B型の事業所では、パニック障害のある方に対して、次のような支援が受けられます。
- 発作が起きた場合に休める個別スペースの用意や、その場を離れやすい座席配置への配慮
- 通所日数や作業時間を体調に合わせて相談できる柔軟なスケジュール調整
- 個別支援計画に基づく、スタッフとの定期的な振り返り面談
- 認知行動療法的な考え方を取り入れた、不安との付き合い方の支援
- 服薬管理や通院日への配慮など、精神科治療との両立支援
事業所によって設備や支援の体制は異なるため、見学や体験利用の際に、発作時の対応についてどこまで相談できるかを具体的に確認しておくと安心です。
パニック発作が起きたときの対処法
就労を続けるうえでは、発作が起きたときにどう対応するかをあらかじめ決めておくことが助けになります。一般的に紹介されることが多い対処法には、次のようなものがあります。
- 呼吸を意識してゆっくり吐く腹式呼吸で、過呼吸を落ち着かせる
- その場を離れ、静かな個室や決まった避難場所で休む
- 「発作は数分でおさまることが多く、命に関わるものではない」と自分に言い聞かせる
- 信頼できるスタッフや同僚に、あらかじめ発作時の対応をお願いしておく
ただし、対処法の効果には個人差があり、症状が重い場合や自己判断が難しい場合は、主治医や精神保健福祉士に相談しながら、自分に合った方法を見つけていくことが大切です。
工賃はどのくらいか
就労継続支援B型は雇用契約を結ばないため、賃金ではなく「工賃」という形で対価が支払われます。工賃の水準は事業所の作業内容や地域によって差があり、確実な金額はお住まいの地域の事業所に直接確認する必要があります。まずは作業内容と工賃の考え方について、次の表で全体像をつかんでおきましょう。
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 契約形態 | 雇用契約を結ばない「非雇用型」 |
| 対価の呼び方 | 賃金ではなく「工賃」として支払われる |
| 働き方 | 週1日・1日数時間からなど、体調に応じて調整可能 |
| 工賃の目安 | 事業所や作業内容により幅があるため、見学時に要確認 |
工賃の全国的な傾向については、B型工賃の平均データでも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
利用開始までの流れ
パニック障害のある方が就労継続支援B型の利用を始める場合、一般的には次のようなステップを踏みます。
- 主治医に就労継続支援B型の利用について相談し、診断書や意見書の作成を依頼する
- お住まいの市区町村の障害福祉窓口で、障害福祉サービス受給者証の申請を行う
- 気になる事業所を見学し、可能であれば体験利用で雰囲気や支援体制を確かめる
- 個別支援計画を作成し、通所日数や作業内容を相談しながら利用を開始する
就労継続支援B型そのものの仕組みについては、就労継続支援B型とはで対象者や1日の流れを詳しく解説しています。また、通院にかかる医療費の負担を軽くする制度として、自立支援医療(精神通院)とはもあわせてご確認ください。
制度の全体像については、厚生労働省の障害福祉サービスの内容のページでも確認できます。
よくある質問
Q. パニック障害の診断だけで就労継続支援B型を利用できますか。
A. 診断名だけでなく、就労が困難な状態であることを主治医の診断書や意見書で確認したうえで利用につながるのが一般的です。まずは主治医や自治体の窓口にご相談ください。
Q. 発作が心配で通所を続けられるか不安です。
A. 多くの事業所では、通所日数や作業時間を体調に合わせて相談できます。見学や体験利用の際に、発作時に休めるスペースがあるかなど、具体的な対応を確認しておくと安心です。
Q. 障害者手帳がなくても申請できますか。
A. 障害者手帳がなくても、主治医の診断書や意見書があれば申請できる場合があります。詳しい要件はお住まいの自治体の窓口でご確認ください。
Q. 就労継続支援B型からステップアップできますか。
A. 体調が安定してきた段階で、就労継続支援A型や就労移行支援、一般就労へのステップアップを目指すことも可能です。ご自身のペースに合わせて、支援員と相談しながら進めていけます。
Q. 家族としてどのようにサポートすればよいですか。
A. 発作への焦りを責めず、通院や通所を見守る姿勢が支えになります。家族だけで抱え込まず、精神保健福祉士や相談支援専門員に相談することもご検討ください。
まとめ|パニック障害があっても自分のペースで働ける場所を
パニック障害は、発作への不安から働くことをためらう原因になりやすい一方で、就労継続支援B型のように、体調に合わせて通所日数や作業内容を調整できる環境であれば、無理なく社会とのつながりを保ちながら働き続けることができます。ひとりで抱え込まず、まずは主治医や地域の相談窓口に、今の状態を伝えることから始めてみてください。
NPO法人琉仁福祉会では、沖縄県沖縄市で就労継続支援B型事業所を運営しており、精神保健福祉士が在籍し、パニック障害をはじめとする精神疾患のある方の見学・体験利用のご相談を受け付けています。ご自身のペースで働ける場所を探している方は、お気軽にお問い合わせください。
