試験雇用とは|精神障害のある方が安心して就職を体験できる制度を精神保健福祉士が解説

試験雇用は、精神障害のある方がハローワークを通じて実際の企業で働く体験ができる障害者雇用の制度です。精神保健福祉士として就労支援に長年携わってきた田中圭周(NPO法人琉仁福祉会 理事長)が、試験雇用の仕組み・対象者・申し込み方法・給与・活用ポイントまでわかりやすく解説します。

「一般就労に挑戦したいけれど、いきなり正社員は不安」と感じている方にとって、試験雇用は就職の第一歩として非常に有効な選択肢です。実際の職場で働きながら自分に合うかどうかを確かめてから判断できるため、ミスマッチを防ぎ、長く働き続けることにつながります。

試験雇用(障害者トライアル雇用)とはどんな制度か

試験雇用とは、ハローワークが実施する「障害者トライアル雇用」制度のことです。就職が難しい障害のある方が、一般企業で最長3ヶ月間、有期雇用として試しに働ける仕組みです。

企業は雇用継続の判断を本採用前に行えるため、採用のリスクを下げられます。一方、求職者側も実際の仕事内容・職場環境・人間関係を体験してから判断できます。双方にとって大きなメリットがある制度です。

項目 内容
実施機関 ハローワーク(公共職業安定所)
試用期間 最長3ヶ月(1〜3ヶ月で事前に設定)
雇用形態 有期雇用契約(アルバイト・パート相当)
賃金 企業が定める賃金(最低賃金以上が必須)
奨励金(企業向け) 精神・発達障害者は月5万円、その他は月4万円
本採用義務 なし(期間終了後に双方が合意のうえ判断)

厚生労働省が実施する障害者トライアル雇用(試験雇用)の制度詳細は、厚生労働省の障害福祉サービス案内もあわせてご参照ください。

試験雇用の対象者と利用条件

試験雇用を利用できるのは、以下の条件を満たす方です。精神障害・発達障害・身体障害・知的障害など、障害の種別は問いません。

  • ハローワークに求職登録をしている方
  • 障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳・身体障害者手帳・療育手帳)を持っている方
  • 就職が困難な状況にある方(就職経験が少ない、または離職期間が長いなど)
  • トライアル雇用に対応した企業の求人に応募する方

精神障害のある方(統合失調症・双極性障害・うつ病・発達障害など)も対象です。手帳の申請中であってもケースによって利用できる場合があります。詳しくはハローワーク障害者窓口にご相談ください。

試験雇用の申し込みから終了までの流れ

試験雇用を利用するには、ハローワークを通じた手続きが必要です。以下の流れで進みます。

  1. ハローワークへの登録・相談:障害者専門窓口に相談し、試験雇用の説明を受けます。希望する業種・勤務条件などを整理しましょう。
  2. 求人票の確認・応募:ハローワークで「障害者トライアル雇用」対応の求人票を確認し、条件の合う企業に応募します。
  3. 面接:通常の採用面接と同様に企業の面接を受けます。この時点でトライアル雇用希望であることを伝えます。
  4. トライアル雇用計画書の作成:企業とハローワークがトライアル期間・業務内容・目標を記載した計画書を作成します。
  5. 試験雇用開始:有期雇用契約を結び、実際の職場で働き始めます。期間は1〜3ヶ月で設定します。
  6. 期間中の支援・確認:ジョブコーチや就労支援機関と連携しながら、職場への適応状況を確認します。
  7. 試験雇用終了・本採用の判断:期間終了後に企業・求職者双方で話し合い、本採用するかどうかを決定します。

試験雇用中の給与と収入の仕組み

試験雇用中は、一般のアルバイト・パートと同様に企業から賃金が支払われます。無給や極端に低い賃金になることはありません。

  • 賃金は企業が設定(最低賃金以上が必須)
  • 企業には月5万円(精神・発達障害者)または4万円の奨励金が支給される
  • 交通費・社会保険は雇用条件によって異なる(事前に確認を)
  • 障害年金を受給中でも働けるが、収入が増えると年金への影響が出る場合がある

障害年金と収入の関係については、年金事務所や支援機関に個別に相談することをお勧めします。医療的・法的アドバイスは専門家にご確認ください。

試験雇用のメリットと注意点

メリット

  • 実際の職場環境を体験してから本採用の判断ができる
  • 「職場が合わなかった」というミスマッチを防げる
  • 企業も安心して雇用を検討でき、採用につながりやすい
  • 就労経験として履歴書に記載できる
  • 奨励金制度により、企業が障害のある方を積極採用する動機になる

注意点

  • 試験雇用は本採用を保証するものではない
  • 期間中に体調が悪化した場合、中途終了となることもある
  • 体調管理・服薬管理を徹底することが特に重要
  • 支援者(就労移行支援・ジョブコーチなど)と連携しながら進めることが望ましい

試験雇用を成功させるポイント

精神保健福祉士として多くの試験雇用支援に関わってきた経験から、成功のポイントをお伝えします。

  • 体調の安定を最優先に:試験雇用期間中は、体調管理が最重要です。主治医・支援者と連携し、無理をしすぎないようにしましょう。
  • 合理的配慮を積極的に申し出る:休憩時間の確保・業務量の調整など、合理的配慮を企業に求めることは権利です。遠慮なく相談しましょう。
  • 支援者と密に連絡する:就労定着支援や就労移行支援のスタッフと連絡を取り合い、困ったことがあればすぐ相談できる環境を整えましょう。
  • 日々の記録をつける:仕事内容・体調・気持ちを簡単に記録しておくと、振り返りや支援者への報告に役立ちます。

試験雇用後の次のステップ

試験雇用が終了した後の選択肢は3つあります。どの道を選んでも、その経験は必ず次に活きます。

  1. 本採用(一般就労):双方が合意すれば本採用となります。その後も就労定着支援を活用して長く働き続けるサポートを受けましょう。
  2. 別の企業での就職活動継続:「この企業では難しかった」と判断した場合も、経験を活かして次へ進めます。複数回の試験雇用も可能です。
  3. 就労継続支援・就労移行支援に戻る:今は一般就労が難しいと感じたなら、就労継続支援B型や就労移行支援でゆっくり準備する選択も大切です(B型と就労移行支援の違いはこちら)。焦らず自分のペースで。

よくある質問(FAQ)

Q. 試験雇用中に体調が悪化したらどうなりますか?

まず主治医・支援者に相談してください。症状が重い場合は中途終了となることもありますが、一時的な休養や業務調整で対応できる場合もあります。企業に早めに状況を伝えることが大切です。

Q. 障害者手帳がなくても試験雇用は利用できますか?

原則として障害者手帳が必要ですが、申請中の方や医師の診断書がある方はケースバイケースで対応できることもあります。ハローワークの障害者専門窓口にご相談ください。

Q. 試験雇用は何回でも利用できますか?

同じ企業への試験雇用は原則1回ですが、異なる企業であれば複数回利用できます。1回の経験を次に活かしましょう。

Q. 就労移行支援に通いながら試験雇用はできますか?

就労移行支援に在籍しながら試験雇用に参加するケースもあります。移行支援のスタッフと事前に計画を立て、無理のない形で進めることが大切です。

Q. 試験雇用後に本採用されなかった場合、就職活動はゼロからやり直しですか?

そんなことはありません。試験雇用の期間は就労経験として積み重なりますし、職場環境の見極め方・自分の強みと課題への理解も深まります。次の就職活動に必ず活きます。

NPO法人琉仁福祉会のご案内

NPO法人琉仁福祉会は、沖縄県沖縄市と埼玉県で就労継続支援B型を運営するNPO法人です。精神障害・発達障害のある方の就労支援・生活支援に取り組み、一人ひとりに合ったペースでの社会参加をサポートしています。

試験雇用を検討中の方、就職に向けた準備を始めたい方、まずはお気軽にご相談ください。見学・体験利用も随時受け付けています。

まとめ

試験雇用は、精神障害のある方が実際の職場を体験しながら就職の判断ができる、障害者雇用の重要な制度です。

  • ハローワークを通じて申し込みができる
  • 最長3ヶ月の有期雇用で、本採用義務はない
  • 企業・求職者の双方がリスクを抑えて就職を検討できる
  • 体調管理・支援者との連携が成功のカギ
  • 本採用に至らなくても、経験は次に活きる

「いきなり就職は不安」と感じている方にこそ、試験雇用の活用をお勧めします。一人で悩まず、NPO法人琉仁福祉会や地域の支援機関にぜひご相談ください。

お住まいの地域で相談できる窓口

就労継続支援B型をはじめとする障害福祉サービスの相談先は、お住まいの市区町村にあります。遠方の事業所を探すより、まず地元の窓口に当たるのが近道です。

  • 市区町村の障がい福祉担当窓口 — 受給者証の申請、制度全般の相談
  • 相談支援事業所 — サービス等利用計画の作成、事業所探しの相談
  • 基幹相談支援センター — 地域の相談支援の中核となる機関
  • 都道府県の精神保健福祉センター — こころの健康に関する専門相談

「どこに聞けばいいか分からない」という場合は、お住まいの市区町村の代表番号に電話して「障害福祉サービスについて相談したい」とお伝えください。担当窓口につないでもらえます。

沖縄・埼玉にお住まいの方へ

NPO法人琉仁福祉会では、沖縄県沖縄市と埼玉県川口市で就労継続支援B型事業所を運営しています。見学やご相談をご希望の方は 琉仁福祉会の公式サイト をご覧ください。お問い合わせフォーム からもご連絡いただけます。