障害者雇用とは、障害のある方が一般企業で働くための法律上の仕組みです。精神保健福祉士として多くの方の就職をサポートしてきた経験から、制度の基本・求人の探し方・就労継続支援B型からの移行ステップまで、実践的な視点で解説します。
法定雇用率の段階的引き上げにより、障害者雇用の求人数は年々増加しています。精神障害のある方も、適切な準備と支援を活用することで、安定して働き続けることができます。
障害者雇用とは:制度の目的と対象者
障害者雇用とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」にもとづき、企業が一定割合以上の障害者を雇用することを義務付けた制度です。国全体で、障害のある方が働きやすい社会を目指しています。
対象となる障害の種類は次の3つです。
- 身体障害:身体障害者手帳の交付を受けた方
- 知的障害:療育手帳(愛護手帳)の交付を受けた方
- 精神障害:精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた方(発達障害を含む)
精神障害のある方(統合失調症・うつ病・双極性障害・不安障害・発達障害など)も、精神障害者保健福祉手帳を取得することで障害者雇用の求人に応募できます。精神保健福祉士として、「手帳を取ることへの抵抗感」を感じる方も多いですが、それが一般就労への大きな一歩になることを多く見てきました。
障害者雇用率制度のしくみ
障害者雇用率制度では、企業の規模に応じて一定割合の障害者を雇用することが法律で義務付けられています。2024年から段階的に引き上げが実施されています。
| 適用時期 | 法定雇用率(民間企業) | 対象企業規模 |
|---|---|---|
| 〜2024年3月 | 2.3% | 43.5人以上 |
| 2024年4月〜 | 2.5% | 40.0人以上 |
| 2026年7月〜(予定) | 2.7% | 37.5人以上 |
法定雇用率を達成できない企業は、不足1人につき月5万円の「障害者雇用納付金」を納める義務があります。逆に、雇用率を超えて雇用している企業には「調整金」が支給されます。この制度が、企業が積極的に障害者雇用に取り組む背景のひとつです。障害者雇用に関する公的情報は厚生労働省の障害福祉サービス情報もご参照ください。
精神障害者が障害者雇用を利用する手順
精神障害のある方が障害者雇用枠で就職するには、まず精神障害者保健福祉手帳の取得が必要です。手帳なしで就職する「クローズ就労」という方法もありますが、配慮を受けながら長く働きたい場合は障害者雇用を選ぶ方が増えています。
手続きの大まかな流れは次のとおりです。
- 主治医・精神保健福祉士に相談し、精神障害者保健福祉手帳の申請を行う
- 市区町村の福祉担当窓口へ申請(診断書・写真・申請書が必要)
- 手帳取得後、ハローワーク専門援助部門や就労移行支援事業所へ相談
- 求人を選び、面接・採用へ進む
- 就職後は就労定着支援を活用して定着を図る
手帳の申請に必要な書類の詳細は、主治医や市区町村の窓口に確認してください。精神保健福祉士など専門職が手続きをサポートすることもできます。
障害者雇用の求人の探し方
障害者雇用の求人を探す主な方法を紹介します。精神保健福祉士として支援する際に活用している情報も合わせてお伝えします。
- ハローワーク(専門援助部門):障害者向け求人に特化した窓口。求人閲覧から書類添削・面接練習まで無料でサポートが受けられます
- 就労移行支援事業所:求職活動を計画的に進めながら、担当スタッフが企業との橋渡しをしてくれます。就労移行支援の詳細はこちら
- 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ):就業と生活の両面を一体的に支援します。職場定着まで継続して関わってもらえます
- 民間の障害者専門求人サイト:インターネット上で多数の求人を掲載。自分のペースで比較検討できます
- 特例子会社:大企業が障害者雇用のために設立した子会社。障害特性に合わせた配慮が整っているケースが多いです
精神障害のある方の場合、いきなり一般就労を目指すより段階を踏むことで、定着率が大きく上がります。障害者雇用への移行を目指しながら、まずは就労継続支援B型や就労移行支援で準備を整えることをおすすめします。
就労継続支援B型から障害者雇用へのステップ
障害者雇用を最終目標に置きながら、段階的にステップアップするルートが、精神障害のある多くの方に合っています。就労継続支援B型は、その最初の入口として機能します。
| ステップ | サービス名 | 主な目的 | 利用期間 |
|---|---|---|---|
| ① | 就労継続支援B型 | 体調安定・作業習慣・コミュニケーション力 | 制限なし |
| ② | 就労移行支援 | 就職訓練・企業実習・応募書類作成 | 最長2年 |
| ③ | 障害者雇用(一般就労) | 雇用契約・社会保険・キャリア形成 | — |
| ④ | 就労定着支援 | 職場定着・生活リズム安定 | 最長3年 |
B型事業所では、毎日規則正しく通所することで体調管理のリズムが整い、作業を通じて集中力や対人スキルが少しずつ身に付きます。「今すぐ就職できるか分からない」という方も、B型から始めることで将来の選択肢が広がります。B型から就労移行支援への移行を検討している方は、就労継続支援B型と就労移行支援の違いもあわせてご覧ください。
就職後は就労定着支援を活用することで、最長3年間にわたって支援員が職場や自宅を訪問し、困りごとを一緒に解決してくれます。一般就労へのハードルを段階的に下げるこのルートは、長く働き続けるための現実的な選択肢です。
障害者雇用で働き続けるためのポイント
障害者雇用で就職した後も、定着して働き続けるために知っておくべきポイントがあります。精神保健福祉士として支援現場でよく伝えていることをまとめました。
- 合理的配慮を申請する:障害の特性を職場に伝え、通院時間の確保・休憩調整・仕事量の加減といった配慮を求めることができます。これは権利です
- 体調変化を早めに報告する:不調のサインを察知したら、自己判断せず早めに上司や支援者に相談しましょう
- 就労定着支援を活用する:就職後6か月〜3年間、支援員が定期的に職場・自宅を訪問し、困りごとを一緒に解決します
- 主治医・相談支援専門員と連携する:医療・福祉・職場の三者が連携することで、長期的な安定につながります
- 障害年金との両立を確認する:障害年金は収入があっても継続受給できる場合があります。年金事務所や社労士に確認しましょう
よくある質問(FAQ)
Q: 精神障害者保健福祉手帳がなくても障害者雇用の求人に応募できますか?
A: 障害者雇用枠の求人には、原則として精神障害者保健福祉手帳が必要です。手帳を取得していない場合でも、就労継続支援B型などの福祉サービスは利用できます。まずは主治医や市区町村の福祉担当窓口に相談することをおすすめします。医療的判断は必ず主治医に確認してください。
Q: 障害者雇用と一般雇用では給与水準に違いがありますか?
A: 雇用形態・業種・地域によって差があります。障害者雇用枠ではパートタイムから始めるケースもあり、最初は一般雇用より給与が低めになることがあります。応募前に処遇・勤務条件・障害年金との兼ね合いを詳しく確認するとよいでしょう。
Q: B型事業所を利用しながら就職活動はできますか?
A: はい、可能です。B型利用を続けながら就労移行支援と並行する方法や、ハローワークで求人を探す方法があります。体力・精神面への負担を考慮しながら、支援者と相談して無理のない計画を立てることが大切です。
Q: 就職後に「障害者雇用枠で働いている」ことを同僚に伝えなければなりませんか?
A: 同僚への開示義務はありません。人事・上司には開示していても、同僚には伝えない「クローズ」のケースも多くあります。どこまで開示するかは、支援者と一緒に考えることをおすすめします。
NPO法人琉仁福祉会からのご案内
NPO法人琉仁福祉会は、沖縄県沖縄市と埼玉県で就労継続支援B型事業所「LARGO(ラルゴ)」を運営しています。精神保健福祉士を中心としたスタッフが、利用者おひとりおひとりのペースに合わせてサポートします。
障害者雇用を最終目標に据えて準備したい方も、まずはB型で生活リズムを整えたい方も、どちらのご相談も歓迎しています。
- LARGO沖縄市:沖縄県沖縄市比屋根(ひやごん)
- LARGO埼玉:埼玉県
- 見学・体験利用は随時受け付けています
お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。
まとめ:障害者雇用に向けて今日からできること
障害者雇用とは、障害のある方が一般企業で安心して働くための制度です。法定雇用率の段階的引き上げにより、今後も求人数は増加していくと予想されます。
- 精神障害者保健福祉手帳を取得することで、障害者雇用枠の求人に応募できます
- ハローワーク・就労移行支援・民間サービスを組み合わせて求人を探しましょう
- B型事業所→就労移行支援→障害者雇用という段階的なルートが長く働くための近道です
- 就職後も就労定着支援・合理的配慮・主治医連携で安定を続けられます
一人で悩まず、精神保健福祉士や相談支援専門員などの専門家に相談しながら、あなたのペースで一歩ずつ進んでいきましょう。
お住まいの地域で相談できる窓口
就労継続支援B型をはじめとする障害福祉サービスの相談先は、お住まいの市区町村にあります。遠方の事業所を探すより、まず地元の窓口に当たるのが近道です。
- 市区町村の障がい福祉担当窓口 — 受給者証の申請、制度全般の相談
- 相談支援事業所 — サービス等利用計画の作成、事業所探しの相談
- 基幹相談支援センター — 地域の相談支援の中核となる機関
- 都道府県の精神保健福祉センター — こころの健康に関する専門相談
「どこに聞けばいいか分からない」という場合は、お住まいの市区町村の代表番号に電話して「障害福祉サービスについて相談したい」とお伝えください。担当窓口につないでもらえます。
沖縄・埼玉にお住まいの方へ
NPO法人琉仁福祉会では、沖縄県沖縄市と埼玉県川口市で就労継続支援B型事業所を運営しています。見学やご相談をご希望の方は 琉仁福祉会の公式サイト をご覧ください。お問い合わせフォーム からもご連絡いただけます。

