精神障害者雇用は、精神疾患のある方が一般企業で働くための重要な制度です。精神保健福祉士として日々の支援の現場で感じるのは、「就職したい」という意欲がありながら「どう進めればよいかわからない」という声が非常に多いということです。この記事では、精神障害者雇用の仕組みから求人の探し方・採用面接のコツ・職場定着支援の活用法まで、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 精神障害者雇用が2018年から法定雇用率の算定対象になった背景と意義
- 精神障害者保健福祉手帳を活用した求人の探し方
- 採用面接で伝えるべき配慮事項の具体的な伝え方
- 就労移行支援・就労定着支援など福祉サービスとの上手な組み合わせ方
精神障害者雇用とは|制度の基本を理解する
精神障害者雇用とは、統合失調症・うつ病・双極性障害・不安障害・発達障害などの診断を受けた方が、一般企業に雇用されて働くことを指します。法的根拠は「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」です。
2018年4月の法改正により、精神障害者も法定雇用率の算定対象に正式に加わりました。それ以前は身体障害者と知的障害者のみが対象でしたが、改正によって企業が精神障害者を雇用することへの社会的インセンティブが大きく高まりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | 障害者雇用促進法 |
| 法定雇用率(民間企業) | 2024年度〜2.5%、2026年度〜2.7% |
| 精神障害者が算定対象になった時期 | 2018年4月〜 |
| 雇用カウントの条件 | 週20時間以上の雇用(原則) |
| 短時間労働の特例 | 週10〜20時間未満でも0.5人としてカウント可能(2024年〜) |
| 対象となる証明書 | 精神障害者保健福祉手帳 |
精神障害者雇用で企業に雇用されるには、原則として精神障害者保健福祉手帳が必要です。手帳は1・2・3級があり、等級にかかわらず障害者雇用枠の求人に応募することができます。
精神障害者雇用の求人を探す3つの方法
精神障害者雇用の求人を探す主な方法は以下の3つです。自分の体調や就職活動に充てられるエネルギーに合わせて選びましょう。
①ハローワーク(公共職業安定所)
全国のハローワークには「障害者専用窓口」があり、専門の相談員が就職活動を支援します。精神障害者保健福祉手帳を持参することで、障害者雇用枠の求人に応募できます。また、就職後の職場定着を支援するサービスとの連携もスムーズです。
②就労移行支援事業所を経由する
就労移行支援は、一般就労を目指す方が利用できる障害福祉サービスです。履歴書の書き方・面接練習・職場体験など、就職活動を一貫してサポートしてもらえます。支援員が企業との橋渡し役を担うため、「自分では企業に連絡しにくい」という方にも安心です。
③障害者専門の就労支援サービス・求人サイト
インターネット上にも障害者雇用に特化した求人サイトやエージェントがあります。在宅勤務・時短勤務・週3日勤務など、精神障害者が働きやすい条件の求人を絞り込んで探せる点が特徴です。就労アセスメントを受けて自分の強みと課題を整理してから活用するとより効果的です。
精神障害者雇用の採用面接で大切な「開示」の考え方
障害者雇用枠で採用面接を受ける際は、自分の症状や必要な配慮を具体的に伝えることが重要です。これをオープン就労といいます。
面接で伝えるポイントは次の通りです。
- 症状の説明より「できること」を中心に:「疲れやすい」ではなく「集中して取り組める時間は午前中の4時間で、午後は軽作業に向いています」と伝える
- 必要な配慮を具体的に:「指示は口頭だけでなく書面でいただけると助かります」など、企業が実際に対応できる内容で伝える
- 通院頻度を明確に:「月1回の通院があり、その日は2時間早退させていただきたい」など、事前に取り決めておく
「どう伝えればよいかわからない」という方は、就労移行支援の担当者や精神保健福祉士に事前に相談することをおすすめします。
精神障害者雇用における合理的配慮の具体例
採用後、企業は精神障害のある従業員に対して合理的配慮を提供する義務があります(障害者差別解消法・改正障害者雇用促進法)。合理的配慮とは、障害のある方が職場で能力を発揮するために必要な調整のことです。
- 休憩室の確保・疲れたときに短時間休める場所の提供
- 口頭の指示に加えて書面やメモでの指示
- 通院のための勤務時間の調整(有給または欠勤扱い)
- 繁忙期など業務量が増える前の事前周知
- 上司や産業医・保健師との定期的な面談機会の確保
- フレックスタイムや時差出勤の活用
配慮を申し出るときは「病気の説明」ではなく「こういう環境があれば力を発揮できる」という形で伝えると、職場との関係が良好になりやすいです。
精神障害者雇用後の職場定着|就労定着支援を使い倒す
精神障害者雇用で就職できても、長く働き続けることに不安を感じる方は多くいます。そのような方は就労定着支援サービスを積極的に活用しましょう。就職後3年間、就労支援員が定期的に職場を訪問し、職場での困りごとを一緒に解決してくれます。
また、ジョブコーチ(職場適応援助者)を活用すると、採用直後の「職場になじむ」プロセスを専門家が直接支援してくれます。慣れない職場環境でパニックになりそうなとき、ジョブコーチが間に入ってくれるのは大きな安心につながります。
精神障害者雇用と特例子会社|少数精鋭の働きやすい職場
特例子会社とは、大企業が障害者雇用を目的として設立した子会社です。精神障害のある方への配慮が徹底されており、症状の波がある方でも比較的働きやすい職場環境が整っています。
特例子会社への就職を目指す場合も、就労移行支援や就労アセスメントを通じて自分の強みと課題を明確にしてから臨むと、採用後の定着率も高まります。
よくある質問(FAQ)
Q. 精神障害者雇用の求人は増えていますか?
A. はい、年々増加しています。2018年の法改正以降、精神障害者を対象とした求人は全国で増え続けています。ただし地域・職種によって差があるため、ハローワークや就労支援事業所に相談しながら求人を探すことをおすすめします。自立支援医療の受給者証だけでは障害者雇用枠に応募できない点に注意が必要です。
Q. 就労継続支援B型から精神障害者雇用(一般就労)に移ることはできますか?
A. はい、可能です。就労継続支援B型で体力や生活リズムを整えてから就労移行支援に移行し、一般就労を目指すステップを踏む方も多くいます。焦らず段階を踏むことが長期定着につながります。B型の工賃についてはB型工賃の記事もご覧ください。
Q. 精神障害者雇用の給与は一般の雇用より低いですか?
A. 障害者雇用枠でも最低賃金以上の賃金が保証されます。一般雇用と同じ賃金体系が原則です。なお就労継続支援B型は最低賃金の適用外の「工賃」制度であり、一般就労とは異なります。
Q. 精神障害者保健福祉手帳がなくても精神障害者雇用枠に応募できますか?
A. 障害者雇用枠の求人に応募するには原則として精神障害者保健福祉手帳が必要です。手帳の申請方法については精神障害者保健福祉手帳の記事をご覧ください。また、障害者雇用全般の仕組みについても参考にしてください。
琉仁福祉会の就労継続支援B型|精神障害者雇用への準備をサポート
NPO法人琉仁福祉会は、沖縄県沖縄市と埼玉県で就労継続支援B型事業所を運営しています。精神障害者雇用(一般就労)を将来の目標に掲げながら、「まず体力をつけたい」「生活リズムを整えたい」という方に、個別の支援計画に基づいたサポートを提供しています。
- 精神保健福祉士による個別相談(就職活動の相談も可)
- 就労移行支援事業所との連携・紹介
- 通院・服薬管理と並行した就労継続支援
- ピアサポートを活用した仲間との交流
見学・体験利用は随時受け付けております。精神障害者雇用に向けての不安や疑問は、まずお気軽にご相談ください。
まとめ
精神障害者雇用は、2018年の法改正以降、企業の受け入れ体制が着実に整備されてきています。大切なのは、焦らず自分のペースで就職活動を進めること、そして専門家のサポートを上手に活用することです。
精神障害者雇用を目指す方は、まず精神障害者保健福祉手帳の取得を検討し、就労移行支援や就労定着支援などの福祉サービスを組み合わせながら一歩ずつ前進していきましょう。精神保健福祉士として、みなさんの就労を全力でサポートします。ご不安なことがあれば、いつでも琉仁福祉会へご相談ください。
お住まいの地域で相談できる窓口
就労継続支援B型をはじめとする障害福祉サービスの相談先は、お住まいの市区町村にあります。遠方の事業所を探すより、まず地元の窓口に当たるのが近道です。
- 市区町村の障がい福祉担当窓口 — 受給者証の申請、制度全般の相談
- 相談支援事業所 — サービス等利用計画の作成、事業所探しの相談
- 基幹相談支援センター — 地域の相談支援の中核となる機関
- 都道府県の精神保健福祉センター — こころの健康に関する専門相談
「どこに聞けばいいか分からない」という場合は、お住まいの市区町村の代表番号に電話して「障害福祉サービスについて相談したい」とお伝えください。担当窓口につないでもらえます。
沖縄・埼玉にお住まいの方へ
NPO法人琉仁福祉会では、沖縄県沖縄市と埼玉県川口市で就労継続支援B型事業所を運営しています。見学やご相談をご希望の方は 琉仁福祉会の公式サイト をご覧ください。お問い合わせフォーム からもご連絡いただけます。

